私が古いジュエリーに興味を持ったきっかけは、祖母から千本透かし細工のジュエリーを譲り受けたことです。大粒の色石やパール、合成石、金属の素材も様々。職人技が光る彫りや細工を見たとき、なんて手の込んだ作りなんだろうと感心しました。量産できない手仕事のジュエリー。下記のテーマで記載します。
▶︎「千本透かし」「ミル打ち」について
▶︎刻印から時代を考える
千本透かし細工とは
「千本透かし」という技法をご存知ですか。1950年代から(昭和20年〜30年ごろ)日本で多く作られた指輪に見られる細工です。糸鋸で1つ1つ金を透かしていく、気の遠くなるような技です。
これが千本透かしです。1つ1つ職人さんが透かしています。
日本人らしい几帳面さというか、真面目さが現れている様。
戦後の貴重だった金属を大切に材料費を抑える工夫があった様で、それもとても日本的な考え方で素敵だと思いませんか。
ミル打ちについて
そしてこの指輪のお気に入りポイントは、細かなミル打ちです。
ミル打ちはミルグレインとも言われていて、結婚指輪にもよく見られる技法。
細かい粒を打ち込んでいく技法です。西洋アンティークにもよく見られるミル打ちですが、日本の古い指輪や帯留めにもよく見られます。
祖母が愛用していたので、角も削れてまろやかになっていますね。
ミルもかなり削れてますが、ぐるりとパールを取り囲む形で施されているのが分かります。
刻印について 金属や時代が分かる
そして、古い指輪を見たとき「いつの時代の指輪かな?」と気になります。素人なので、大まかにしか分かりませんが、指輪の刻印や地金の厚みでおおよその年代が分かります。
▶︎刻印から見る素材
ちょっと分かりにくいですが、左から
「DH」「WG」「K14」とあります。
金属はホワイトゴールド、14金ということが分かりました。少し黄色くなっているのは経年劣化でしょう。
ちなみに、DHという刻印はジュエリーアカウントで教えてもらったのですが
イギリスアンティークを真似たホールマークのようなもので「40年〜50年ごろ」に日本製の証として刻印したという説があるそうです。
▶︎刻印から見る時代について
「陽刻」か「陰刻」かをまず確認します。この指輪であれば、「陽刻」ですね。この浮き出るような刻印は古いもので、昭和20年〜30年代まで一般的に使用されていたそうです。となれば、え?戦前?とも思うのですが、戦後間もない頃まで陽刻を使っているという説もあるので、戦前か戦後かの判断は素人には難しいところです。千本透かしの技法も戦後に多く使われているので、戦後が濃厚でしょうか。
▶︎金属の厚みをみる
陽刻の指輪を手にした時に戦前か戦後に作られたもの、どちらだろうと思いますが、戦時中の指輪は金属を限りなく削っているものが多いことや政府の金属回収の法令から、あまり残っていないと思います。となると、このマベパールはある程度、金の厚みもあるので戦後間もなく、作られたものだろうと推測します。
時代背景とジュエリー
昭和の指輪には日本の職人さんの技術がぎゅっと詰まっていて、見ていて飽きません。そして面白いのが時代背景がジュエリーに反映されているということ。戦前は金も貴重でとにかく金属の重量を透かしたり、曲げたりして工夫が見える指輪。そしてオーダーして作らせ、使われる宝石も大きく良質なものが多い。ある程度裕福な人でないと装飾品を持つことができなかったことも伺えます。
また、今回紹介した戦後(おそらく)のジュエリーは、戦争が終わり、少しずつ経済が回復して元気になっていく時代。女性がスカートを履いて、スカーフを巻いたり、装飾品を持つ様になり、指輪の素材も18金以外も使われたり、シルバーのジュエリーや合成石も出てきます。シルバー指輪に本物の宝石を付けていたり、おもちゃのような明るい色の合成石も見ていて楽しいです。
まとめ もっと昭和ジュエリーが見たい人へ
さまざまな時代を生きたジュエリーが何十年も経って、今残っている。その1つ1つは似ていても全く同じものはなくて、指輪と過ごした人の物語が刻まれている。
そうしたところも古い指輪の魅力だと思います。私は祖母が写真で辿ると人生の節目節目に、歳を重ねてからは旅行や会食に気軽に使っていたことを知りました。年代からすると祖母の母世代の物でしょう。受け継ぐ指輪、これからも大切にしていきたいです。
【そんな昭和ジュエリーをもっと見たい方へ】
▶︎Instagramで「昭和ジュエリー」と検索してみてください。カラフルな合成石の指輪もたくさん見られて、楽しいです。
▶︎昭和の指輪や帯留めなど 歴史と共に学べる資料集の様な本です!
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最後までお読みいただき、ありがとうございました!
昔の指輪の魅力が少しでも伝われば嬉しいです^^